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ウマイヤモスク(720asahi)

シリア
所在地:ダマスカス
完成年:714年
藤森照信(建築史家)
遺産 1.jpg遺産2.jpg

 イスラム建築はなじみが薄い。至高の聖地メッカとメディナは、研究者であれど異教徒は入ることはできないし、各地のモスクをいくつか訪れたことはあるが、内部は高度な建築的演出が計られているわけではなく、メッカの方向の壁に小さなくぼみ(ミフラーLブ)があるばかり。すばらしかったのは、スペインの例(アルハンブラ宮殿、コルドバの大モスク)くらいか。私以外の人もなじみ薄なことは、このシリーズ、あまりイスラム建築が登場しなかったことからも分かるだろう。
 地中海世界きっての古都で知られるシリアのダマスカスを訪れた時、ついでにウマイヤモスクに寄った。聖書にも登場する長い一本道を進み、途中で折れてこの地方固有の迷路状過密商店街(スーク)を抜けると、急に巨大な塵に囲まれた一画が現れ、靴を脱いで小さな入り口からもぐり込むように入ると、そこは……。
 天国だった。物と人と騒音と臭いが渦巻くスークの雑踏をこの世とするなら、開放感も静けさも美しさもこの世とは思えない別世界が広がっていた。
 といっても、肝心の礼拝堂ではない。壁にミフラーブが附き、柱が並び、絨毯の敷かれた礼拝堂はいつものように暗く、広いだけ。異教徒の建築探偵の目にも天国と思われたのは、礼拝堂の前に広がる中庭の方だった。靴を脱ぎ裸足になって、まず入るのはこの由庭なのである。
 白い大理石が敷き詰められた幅137㍍、奥行き63㍍の中庭。礼拝堂をのぞく三方は回廊に囲まれ、中央には泉が設けられ、教徒は手足を洗い、口をうるおしてから礼拝堂に向かう。
 礼拝堂の中庭に面した外壁の中央部には、モザイク画が描かれているが、イスラム建築に多い抽象的な装飾画ではなく、いたって具体的で、木々が茂り、花が咲き、果実がたわわに実り建物がのぞく。バックは金。金屏風のごときモザイク画。
 イスラムに詳しい建築史家の深見奈緒子さんに確かめたからまちがいないが、■これこそ現存世界最古のモスク建築なのである。ウマイヤ朝が、714年、威信をかけて作ったのがウマイヤモスクだった。立派で当たり前。
 北に面した金地のモザイク画に光が回るのを待っていると、白い大理石の表面が夕陽を反射し、水を張ったように見える。モザイク画の木々も水面に映る。砂漠のオアシスを思った。
◆キリスト教会を転用◆
 シリアのダマスカスを首都にウマイヤ朝が成立したのは661年、ムハンマドの死から30年ほどの時期にあたる。
 その約半世紀後、ウマイヤ朝最盛期の第6代カリフ、ワリード1世が「ウマイヤモスク」を建設した。
 初期イスラム建築の代表的存在であり、もとあった洗礼者ヨハネのキリスト教会の一部を転用したと伝えられる。
 ビザンチン文化との関係をうかがわせる装飾的なモザイクや、2列のアーチがつくる力感あふれる内部空間などが
見どころとなっている。
 ●シリアの現在の情報を集めた「シリア・ゲート」(www.syriagate.com)のダマスカスの項目に、「ウマイヤモスク」のページが収録されている。書籍は『世界のイスラーム建築』(深見奈緒子著、講談社現代新書)がある。


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コメント 1

mistletoe

残暑お見舞い申し上げます。
ブログ界から離れ仕事に追われる日々でした。
私に一番なじみがあるのはパリのモスクです。
パリに行けば必ずル・モスクへ。
目的は美味しいクスクスやタジンやミントティーですが。
建物の美しさにも魅了されております。
by mistletoe (2008-08-19 01:15) 

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